文法の解説。大学受験、英検、TOEIC、大人の学び直しなどに。
解説1 3つの役割
簡単に言うと過去形とは、単に過去を表すものではなく、距離感を表現する形なのです。
①は普通の過去形のイメージです。時間的に過去の出来事を表す用法です。現在からの時間的な距離を表しています。
②は、過去形が持つ距離を表すイメージが現実からの距離感にも派生したのです。現実からの距離とは非現実のことで、仮定法で使います。現実の事実から距離を表しているのです。
③は相手との心理的距離を表します。丁寧・控えめ表現で使われます。相手に距離を置くことで、直接的な響きが和らぎ、丁寧さが増すのです。
このように過去形は、単に過去の意味を表すだけではないのです。
解説2 仮定法過去
仮定法で表現するのは話し手の空想の話です。だから、過去形を使って、現実の事実とは違うと表現しないといけないのです。そのために現実との距離 を表す過去形が使われるのです。現在形は事実を表すものですので使えません。
また、過去形を使うことでこれは事実ではなくて、仮想の話だとわかるようにしているのです。仮定法はifではなく過去形が主役なので注意。
解説3 直説法と仮定法
ex.If it rains tomorrow , I will stay home 「もし雨が降ったら、家に居よう」
If I had a lot of money , I could buy that car. 「もしお金がたくさんあれば、あの車を買えるのに」
上の文は、直接法と言います。現実のことや現実に起こる可能性のあることを表す動詞の形のことです。
下は仮定法です。現実とは違うことを表す動詞の形です。つまり、上の文は、雨が降る可能性があるのです。一方、下は、お金をたくさん持つ可能性は限りなくないことがわかります。
ifがあるからといって、必ず、仮定法になるわけではありません。「もし~なら」という英作文をする時は、可能性の有無で条件法か仮定法を使い分けてください。
解説4 助動詞の過去形
助動詞が過去形の時、過去の意味を持つのは稀です。時制の一致や少しの例外的な意味ぐらいです。
例えば、Shouldはshallの過去形ですが、過去の意味を持つでしょうか。「~すべき」などの意味しかなく、過去の意味を持っていません。それにmustは過去形自体がありません。
このように実は、形が過去形だからといって過去の意味はないのです。
では、どんな意味になるかというと「起こる可能性低くなる」のです。
ex.It may rain tomorrow. 「明日雨が降るかもしれない」
It might rain tomorrow「(もしかすると)明日雨が降るかもしれない」
例文を見ましょう。mayは簡単にいうと50%ぐらいの確率ということです。明日、雨が降るかもしれないし、降らないかもしれないということです。一方、 mightは30%ぐらいです。mayより可能性が低くなるのですね。他の助動詞も同じです。
解説5 丁寧な表現
ex.①Open the window 「窓を開けて」
②Can you open the window? 「窓を開けてくれませんか?」
③Could you open the window? 「窓を開けていただけませんか?」
過去形の距離感は相手との心理的距離も表現できます。まず、①は命令形です。一応依頼の表現ですが、とても直接的で、失礼に聞こえます。
そこでこの依頼に距離を置く(丁寧にする)ために助動詞を使ったのが②です。「~して」というより、「~してくれませんか?(~するができますか?)」のほうが丁寧なのは日本語と同じですね。実は、②は、まだフランクな感じがします。友達に使ったりする表現です。
ここからまた丁寧にしたのが③になります。丁寧にするためにまた距離を置くのです。助動詞を過去形にすることで、さらに依頼から遠くなり、丁寧な表現になります。
もちろん、Couldにしたほうが良いのですが、言い方も重要です。お願いする態度やトーンで言わないと皮肉に聞こえてしまいますからね。
参考までに、Could you possiblyにするとさらに丁寧度が増します。それよりも最高に丁寧な表現としてI was wondering if you couldがある。「もしよろしければ~していただけませんか?」という意味です。英語にも敬語はあるのでTPOに合った表現を使えるようにしましょう。
覚えるポイント
1、過去形の3つの意味は?
2、仮定法がなぜ過去か
3、なぜ丁寧な表現は助動詞の過去形を使うか